作者の自他を問わず美しい作品を深く深く愛している画家。男物の服を着て意図的に男のような所作をしているが、これはかつて女であるということを理由に陰湿な嫌がらせを受けたことがあるため。女扱いされることもあまり快く思っていない。
美しくないものを自らの手で作品にしてしまうことで美しいものに作り変えることこそが自らに課せられた天命だと信じている。かつては純粋に美しいと感じたものを描くことの方が多かったらしい。今現在は周囲に美しいものが溢れているため、美しいものを描く機会がまた増えてきたという。
初対面の相手にも親しげに話しかけることができ社交的な性格…と言えば聞こえは良いが、実際のところ美しいと感じたものに対しては老若男女(果ては無生物や概念等)問わず何にでも惚れてしまう性質で、話しかけるというのも半分以上がナンパ。本人としては全員に対して平等かつ誠実に本気の恋をしているのだが、これが原因で人間関係のトラブルが起こったことが過去に何度もある。
「やあ、はじめまして。僕はカシア。美しい君、どうか僕に名前を教えてはくれないかい?」
「僕の作品が美しいだって?ふふ、僕の自慢の子供たちだから当然さ。君のところの子も、勿論君も、とても敵だね。良ければもっと近くで見せておくれ」
「殺したいほど僕が憎い?いいよ、愛しい君に殺されるのなら本望だ。……怒ったり泣いたり忙しないなぁ。ほら、おいで。大丈夫だよ。僕はこの程度で君を嫌ったりしないさ」
「画廊の主役は作品たちだ。僕ら画家はどうすれば彼らがより一層美しく輝けるのかを考える舞台設計者なんだよ」
・処女作『毒婦』
ドレスを纏った女性の絵。透き通るように白い肌や靭やかな手脚はまるでクラゲを擬人化したようにも見える。所々に貼り付けられた細かく砕いた宝石がキラキラと輝いていて美しいが、この宝石は絵の完成から数年後に付け足されたものである。
この女性のモデルはカシアの母親である。彼女は元々娼婦であったが、とある金持ちの男の愛人となり、最終的に男を唆して男の妻を家から追い出してしまった。男はカシアが生まれてからも彼女に傾倒し続け、そんな男を裏で嘲笑いつつ金や宝石をせびる母親の姿にカシアはうんざりしていたという。
とはいえ母娘の間には愛情があり、カシアの母親は男よりも娘を愛し、男に金品を貢がせていたのも将来は画家になりたいという娘の願いを叶えるためでもあった。
家を出る前に母親から資金としては多すぎるほどの宝石類を渡されたが、カシアはそれ以前に細々とした仕事で貯金を貯めており、母親からの心遣いに感謝して受け取りはすれど、それらに資金として手を付けることは一度もなかった。
『毒婦』に使われた宝石はこの母親から貰ったものである。
この『毒婦』を含めた計8作品はアトリエごと燃やされたため現存していない。
#生画
The Colors! Gallery moderators will look at it as soon as possible.
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25 Apr, 2025, 3:15 pm
覚えてなくていい関係者一覧
ベアトリス・ベネット
カシアの母親で元娼婦。元々は北国の南方に位置する比較的貧しい港町の生まれ。海軍が特に強い国だったが諸事情により上手く統率が取れなくなったタイミングで敵国に攻め込まれ、捕虜として敵国に連れてこられた。
そのまま数年間軍事施設で働かされたが、終戦後に捕虜の解放運動が起こり解放されるも故郷は既に失われており、また解放された捕虜の受け入れ先も整備されていなかったため手っ取り早く宿と仕事が手に入りそうという理由で娼館に入った。
初めてついた3、40代ほどの変わり者の客から絵を教わり、以降それを芸の一つとして館内でも売れっ子の娼婦として成長。19歳の時にカシアの父親となる男と出会い、20歳の頃に娼館を出た。
自信家・前向きな思考の持ち主。自分の美しさに絶対的な自信があり、また娘のカシアを「私の次に可愛い子」と呼び深く愛している。
カシアに絵を教えたのはベアトリスであり、またカシアが最初に発表した『毒婦』のモデルが自分であることを知っている。タイトルへの不満は特にないが「私はもっと美しいでしょ?!」という文句は零している。
マリウス・ベネット
カシアの父親。議員。付き合いで訪れた娼館でベアトリスに出会い、惚れ込んだ人。貢癖がある。
ベアトリスに出会った時点で幼い息子を持つ既婚者だったが彼女に言いくるめられて妻を家から追い出してしまっている。なお長男は良くも悪くも彼に似ているためベアトリスに懐いてしまっている。
ベアトリスを家に招いてから妊娠発覚までの時間が短すぎたためカシアは血の繋がりがないのではと噂された時期もあったがマリウスはこれを否定しており、そうでなくとも自分の子であることには変わり無いと公言するなど親子仲は悪くない様子。
お師さま
娼館の経営者が懇意にしている画家で、ベアトリスの最初の客であり、彼女の絵の師匠でもある人。絵だけでなく音楽も嗜み、ベアトリスにも両方を教えようとしたが彼女の音楽の才が壊滅的すぎて諦めた。
ベアトリスとは同郷であり、話を聞いてぜひとも会ってみたいと彼女のもとを訪れた。明るいうちにふらっと店に来てはベアトリスを指名し、絵を描き音楽を奏で日が落ちる前に帰る…というよくわからない利用をしているが毎回一晩分の金を払っていたという。ベアトリス曰く「女に困らなそうな見目なのにこんな店に来るし、かと言ってこんなに可愛い私に手を出す素振りもないヘンな人」。
何を考えているかわからないと言われると「その言葉は聞き飽きたからもっと他の言い回しをしてくれ」と答えるため変人と思われている自覚はあるらしい。