高校に入学したばかりの頃....仮にAとBとでもするか。AとBはすぐに仲が良くなった。Aは容姿端麗運動神経抜群！おまけに勉強も出来るすごい奴だった。...Bは普通だった。運動も、勉強も。それでもとても良い奴で誰にでも親切だった。
入学して１ヶ月が過ぎようとしていたとき、Aは3年生の美人で有名な先輩と付き合うことになった。先輩の一目惚れでそっちから告白をしてきたらしい。Aは断る理由も無かったので付き合うことにした。それで良いと思っていたんだ。

先輩と付き合ってから、Aには先輩以外の女子が話しかけてくるどころが目も合わせてくれないようになった。なんでか分かるか？当時は分からなかったけど、簡単な理由さ。「私の彼氏に色目をつかっただろ」って。先輩に酷いいじめを受けた女子が何人もいたそうだ。勿論、Aには知られないように。でも、Aは見てしまったんだ。その現場を、偶然にも...な。いじめられている子はAのクラスメイトで、Bが密かに好意を寄せている子...Cだった。Aはその場で止めに入り、勿論いじめをやめるよう先輩に言った。でも先輩はやめなかった。これ以上自分のせいで誰かが傷つくのが嫌になったAは、先輩と別れた。

別れてからも、女子からAに話しかけることは無かったし、Aからも話しかけようとしなかった。Bと、男友達とだけで、良かったんだ。今まで通りに戻っただけ。Cが先輩にいじめられることも無くなった。
なんだかんだみんな忙しかった。入学したばかりの頃だったしな。そんなこと、もう誰も覚えていないみたいに月日は流れていった。
確か...1年の10月......くらいだったかな。Bが、Cに告白する...って言ってきたんだ。Aは、2人はお似合いだと思っていたから応援したんだ。...返事は保留、だったらしい。でもBは振られなかったのが嬉しくて、保留の期間も連絡をしたり遊びに行ったり....したそうだ。幸せそうだった。

12月になった。BはCからの連絡が急に冷たくなったと、気にしていた。
Aが、突然Cに話があると言われて呼び出された。.......まさか、と思った。そんな訳はない、と。そう、思っていたのに...。告白されたんだ。Aが。Cに...。Aは断ったんだ。先輩の件で、女子と関係を持つのは嫌だったし何より、Bが可哀想だと思ったから。でもCは諦めなかった。話を聞いた限りでは、いじめから救ってくれて感謝している、Bと仲良くし始めたのもAのことを知りたかったからだ...ってな。.....後ろから音がしたんだ。ガサッって。人が出てきたみたいな、小さな音。嫌な予感がした。Bが居たんだ。.....あとから分かったことなんだが、Bをそこに呼び出したのはAと別れた先輩だったんだ。先輩はCがAに告白することを知っていたらしい。それでCに好意を寄せているBをそこに呼び出して......。AとBの関係を壊したんだ。

その日からは地獄のような高校生活が幕を開けた。誰も、Aと関わろうとしない。無視されるだけならまだ良かったんだが.....それはいじめにまで発展した。なぜ、学校中にこの事が知られているのか...簡単だった。先輩だ。あの女が、Aに振られたのを恨んでいたんだ。...今思うと、「復讐」だったんだ。だから、孤立させた。BともCとも、その日からは話していない。Bにいたっては、......Aを軽蔑した眼差しで見ていた。

そっからAは、女も、男も、全員、憎くて憎くてたまらなくなった。全員消えればいいのに。そう思いながら毎日生きていた。高校には通い続けた。その時は教員になりたいと思っていたし、負けたくなかったから。

.......んで、無事卒業して、高校の連中とは一切関わらなくなった。Aは大学に進学したが、皮肉なことに、女に声をかけられることが増えた。「容姿端麗」だからな。見た目だけで近寄ってきて、付き合おうとしてくる。正直、気味が悪かった。はじめは断ったりしていた。けど、段々キリがなくなってきて全員受け入れるようになった。.....なぜかって？考え方を変えたんだ。「復讐」だと思うようにしたんだ。簡単だろ？女が言い寄ってくる。Aは快くOKして遊ぶ。向こうはAが気があると勘違いをする。...それで、振るんだ。.....こんなことが復讐になるのか？先輩とは無関係だろ....って？....ハハ！Aにとっては、言い寄ってくる女は全員、アイツと同じだ。虫みたいにベタベタベタベタ.......気味が悪くてしょうが無い。なにより、A本人が、その生き方が1番救われると、思ったんだ。

「.....話が長くなったな、悪い。俺が知ってるのはここまでだ。Aは今後の人生、一生、あんな風に生きていくんだろうな。でも、本人が望んだことだ。....さあ、もう話すことはない。さっさとどっか行ったらどうだ？......は？俺の話じゃないかって？.....だったらどうする？慰めてくれるのか？それとも非難するのか？....まあ、俺の話じゃないが。ほら！もうどこかへ行ってくれ。」