「ああ、なんて美しい漆黒のヘドロだろう。美しい人、地獄は此方ですよ」
「あら、私をエスコートしてくれるの」
「どうぞ手を取って」
「引きちぎったら二度と返してあげないわよ」
「構わない　恐れているのなら、此方からその手を取って差し上げよう」
「取れるもんなら取ってみなさい」
「ええ　その黒く淀んだヘドロ、ワイングラスに採っておいて後で飲むとしよう」

「ねえ悪魔さん、貴方は悪魔だから私なんかに触れてくれるんでしょう」
「そうです」
「馬鹿ね
貴方が悪魔でない事ぐらい知ってるわ
ねえ　私と一緒に地獄を見てくれるわね？」

「仰せのままに」

「本気なの」
「私は“ご覧の通り”悪魔でございますので、どんな地獄もヘドロも平気であります」

「どうしても私を罪人に仕立て上げたいようね」

「ええ　悪魔たるもの、世界一憎い貴女のためならどんな劇薬だって飲み干してしんぜよう」

「楽しみにしてるわ」

#オタファミ