「相席、いいかな?」
#jeweldoll
少女はそう声をかけてきた。どうぞ、と返すと、ちょっと微笑んでから自分の目の前に座った。
外国にはやはりフレンドリーな人が多いのだろうか。と考えたが、それはどうも違うようで、彼女はトランクを持っていた。自分と同じでこの人もこの国の人間ではないらしい。
「席空いてなくて困ってたの。ありがとね」
それにしても、綺麗な瞳だと思った。
水色のように見えるが、光の当たり方でピンクや黄色にも見える。まるで、創られたもののように。
「私、トランクイリタっていうの。旅行でここに来てたんだけど、ここ、すごい綺麗な街だね」
彼女、トランクイリタは辺りを見回しながら口にする。やはり、誰から見てもそう思うらしい。
「そろそろここを離れる時間なんだけど、どうしても名残惜しくって。だからこのカフェでお茶でもしようかなーってね、えへへ」
と言い、彼女は時計をちらと見てから、あっ、と声を出した。
「そんなこと言ってたらもうフライトの時間になっちゃったみたい。話し相手になってくれて、ありがとね。またどこかで会えるといいな」
去る彼女の横顔には、口調とは裏腹に"無"という感情が張り付いていた。

＿＿＿それから自分が、館で彼女と再会するのはこの一年後の出来事だった。